Flowers in the Rain
1
初めて出会った時には、てっきり男の子だと思っていた。
「アキラ、行くぞ」
晶を連れ、颯爽と去ってゆく後姿を見て、初めて女の子なんだと気づいた。いくら男っぽく振舞っても、女の子らしいお尻のラインは隠しようがないのだから。
次に会った時、なぜだか家庭の事情をいろいろ話された。どうも、誰にでもいいから、溜め込んでいるものを吐き出したいって顔だった。
「ふうん、月姫さんも大変なんだね」
当たり障りのない応答を返しながら、意外に良く変わる彼女の表情を観察したものだ。父親のことを話す時には嫌そうに、母親のことを話す時には憂鬱そう
に。小さな身体に見合った小さな顔。身体の造りが凄く繊細そうで、少し乱暴そうな言葉遣いとミスマッチだ。それがかえって、月姫蒼香を魅力的に見せた。は
すっ葉の妖精というところか。
「いいよ。しゃべったのはわたしの責任だ」
そんなことをいいながら、志貴の顔を見る。ふっと笑みが浮かんだ。柔らかくて、そのくせどこかに諦念を秘めた笑み。細い首筋のラインをわずかに傾げた時、初めて彼女の女を感じた。
「分かったよ。じゃあ、その代わりに俺のことは志貴と呼んでくれよ。それでおあいこにしよう、蒼香ちゃん」
そういい置いて、笑いながら去っていった時、ちょっとだけ心残りだった。彼女と別れてしまうことが。
遠野の屋敷に招いたのは、それからほどない頃だった。学校からの帰り道、公園でぼんやりしている彼女を見かけたのだ。珍しく髪を下ろしている。いや、蒼
香が髪を下ろしているところを見たのは、それが初めてだった。意外に、などといっては失礼だが、まっすぐで艶やかな髪に、天使の輪が踊っていた。はすっ葉
な彼女ばかりばかり見てきたけれど、むしろしっとりと落ち着いた少女らしさを感じた。秋葉で見慣れているはずの浅上の制服が、妙に新鮮に映る。
クレジットカードを作ってもらっていたのだが、それで喫茶店にというのも妙だと思い、屋敷に誘ったのだ。
茶を飲みながら、ちょっと深刻な話をした。こんな事を話す仲じゃないのに、と少し驚いたものだ。
琥珀には『彼女さんなんですねー』とからかわれたものだ。だが、今にして思えば、それは的確な予言だったのだろう。
喧嘩を止めたこともあった。毎週のようにライブに付き合うようになって、何度目だったろうか。ステージの真正面でいきなり罵り合いが始まって、あれよあ
れよという間に殴り合いへと発展してしまったのだ。暗いライブハウスで、無責任に煽り立てる他の客たちに囲まれ、何人かの男たちと大立ち回りする彼女を、
なんとか引きとめようとした。巧みな足捌きで、殴りかかる男たちを交わし、一撃を見舞い続ける彼女。その見事な立ち振る舞いに、志貴は心がときめくのを感
じたものだ。
それから程なく、二人は恋人同士になった。意に染まぬ見合いから逃れたいからと、蒼香に泣きつかれる形で始まったのだった。でも、その頃には、志貴の心の中に、はすっ葉な妖精の姿が、拭いがたく焼き付けられていたのだった。
「そういえば、第一印象はあまり良くなかったんだよな」
蒼香にそんなことを言われたのは、男女の仲となってかなり経った頃、ホテルのベッドでの事だった。さっきまでの濃密な行為の名残で、部屋にはムッとする
ような性臭が満ちている。二人の汗、唾液、蒼香の蜜、そして志貴の精液の臭いだ。二人とも、ベッドに仰向けになって、天井を眺めていた。目を隣にやると、
志貴の手に、ほっそりした手が絡みついている。指先を絡み合わせ、さっきまでの行為を懐かしむように。
更に隣に、白い顔が、やはり天井を眺めている。鼻歌を歌いそうな顔だ。ざっくりカットした髪は、今は汗に濡れている。蒼香の髪は綺麗だな、と志貴はいつ
も思っていた。秋葉の綺麗さとは違う、飾り気の無い簡潔さだ。白い喉の線を辿ってゆくと、それは均整の取れた鎖骨の線に、そして低いけど柔らかそうな胸の
線へとつながっている。さらにおへその辺りの引き締まった、それでいて柔らかそうな線を辿ってゆくと、さっきまで志貴に快楽を与えてくれていた、蒼香の秘
密の部分へと続いてゆくのだ。蒼香がそれをさらけ出してくれるのは、志貴にだけだ。その事を考えると、どうにも幸せな気分になり、また同時に後ろめたい思
いもする。
「良くなかったって、冴えない奴なのは事実だろう?」
自分のことを言っているのだと理解した志貴は、そう答えていた。
「まあ、冴えないっていえばそうだけど――」
汗ばんだ乳房を揺らして、蒼香は志貴の肩に頭を寄せた。
「そういう意味じゃなくて、なんていうか優柔不断そうでね」
「ん、そう見えた?」
「そうだよ。いつまでも二つのもののどっちかを決められないで、考えあぐねてるって感じだったよ」
蒼香はおかしそうにいう。
その言葉に、志貴はドキッとした。そう、志貴は二つのもののどちらか決められないで、困っている。蒼香を捨てるか、秋葉を傷つけるか。
蒼香と出会う前に、志貴は秋葉と男女の仲になっていた。大切な妹が、実は自分の存在を支えてきてくれた恩人であり、自分を一途に思い続けてくれていたの
だと知った志貴は、もう秋葉を女として愛することしか出来なくなったのだ。そして秋葉の命を救うために、躊躇無く自分の命を絶った。そこから生還できたの
は、僥倖に過ぎない。
そんな思いまでして救った秋葉と再会したときから、志貴と秋葉は仮初の兄妹でいながら、頻繁に愛し合う恋人同士になった。たとえ表立って公言できなくとも、この先の一生を夫婦として生きてゆくのだ。そう信じていた。
だというのに――
「ほら、なに呆けてんだよ」
蒼香が、その繊細な指で、志貴のモノの先端を弾いた。
「いててて、それ、やめてくれ」
「ふふふ」
蒼香は笑いながら、ふと指先に着いたものを舐め取った。志貴のモノには、蒼香の蜜と、志貴の放ったものとがこびり付いている。まだ十六歳。しかも自分で
も気にするくらいスレンダーで、膨らみに乏しい身体なのだ。だけど、そうして淫らな真似事をする彼女は、ゾクッとするほど艶やかで、色っぽかった。
「ほら、志貴は優柔不断なんだけど、志貴のモノはいつでもはっきりしてるんだからさ」
蒼香はおかしそうにいいながら、志貴のオトコに指を滑らせた。蒼香が指先で弄ると、志貴のペニスはむくむくと起き上がってきた。繊細な指先が与える刺激が、とても心地よい。
「まったく、どうしてくれるんだよ」
そのカチカチになったモノを揺らして見せると、蒼香はやれやれと肩を竦めて見せた。
「どうするもなにも、サカっちまったのなら、やることは一つだろう?」
蒼香はするりとベッドから降りた。志貴も心得たもので、ベッドの端に腰掛けると、少し足を開いた。蒼香はその前に跪く。
志貴のペニスは、隆々と屹立している。先端から根元まで、ぬるぬると濡れている。蒼香の蜜と、志貴の精液でだ。特に先端は、さっきの行為で放った名残
が、先端から幾筋も絡み付いて見えた。蒼香は志貴のモノを握ると、志貴と目線を合わせた。期待に濡れた視線と視線が絡み合う。蒼香の薄い、艶っぽい唇が猥
褻だ。
蒼香は、志貴の足の間にいざり入った。両手で志貴の肉茎を包む。その華奢な手から、志貴の逞しいものは零れるほどだ。
「男のモノってさ、いつ見てもすごい形してるよね。それに、臭いもさ」
「その臭いの半分は、蒼香のなんだぜ」
実際、志貴のモノからは、蒼香の生々しい臭いもしている。いや、裸の蒼香が目の前に跪いているのだから、今はもっと強まっているのだが。
蒼香は、フフッと笑うと、先端から志貴のモノを舐り始めた。ちろちろと、ピンク色の可愛らしい舌先を伸ばし、こびり付いた志貴の精液と、自分の蜜とを舐
め取って行く。その小さな口には、志貴のモノはとても収まりきらない。それでも、蒼香は大きくほおばり、また吐き出した。
「――――」
志貴は、思わず熱い息を吐いた。亀頭の周りを這い回る、舌の感触がたまらない。
目を下げると、蒼香と目が合った。志貴の尿道口からエラにかけて、小さな舌を這わせている。裏側から舐る形だから、志貴の弱点は最初から攻撃対象だ。口をすぼめ、先端を吸った。志貴は、思わず声を上げかけた。蒼香は、悪戯っぽい目をしている。
蒼香の前髪が顔にかかっているので、手を伸ばしてかき上げてやった。きれいなうなじの線が露になった。悪戯心を起こして、指先で愛撫する。蒼香は敏感だ。志貴がうなじの線を指でなぞる度、亀頭を這い回る舌の動きが止まる。
蒼香の頬は上気し始めている。亀頭を口に含み、また吐き出す度、頤へと唾液が滴り落ちてゆく。志貴の先端を追う目は、もう欲求に濡れている。志貴も、蒼香の舌を敏感に感じる度に、思わず熱い吐息を漏らしてしまう。
もう、蒼香の口の中で、志貴のモノは猛りに猛っている。いつもなら、蒼香を抱き上げて、繋がってしまうだろう。熱くて狭い、その蜜壷に包まれるのを想像すると、たまらなくなってしまう。だが今、志貴は敢えて蒼香の成すがままにさせていた。
蒼香の肩は想像以上に細くて、志貴の腕の中にすっぽり包み込めてしまいそうだ。華奢な手を擦り合わすようにして志貴のペニスを包み、口で無心に奉仕して
くれる。腕の間から、蒼香の胸が見えた。控えめだが、ちゃんと盛り上がりがある。秋葉のそれよりは、乳房という感じだ。もっとも、志貴にすれば、どちらも
愛しい恋人の胸なのだけど。
蒼香の舌が志貴の袋を這い回り、特に合わせ目を責め始める。志貴はペニスの付け根に、熱いうねりが盛り上がるのを感じた。ギュッと括約筋を引き締めて、それをやり過ごす。
蒼香の胸の先端の、薄い色の乳首はつんと立っている。愛し合うようになった頃、蒼香の乳首はなかなか志貴の愛撫に応えてくれなかった。たっぷり舌で刺激
して、口で吸い出して、ようやく硬く勃起するくらいだった。だが今、志貴と頻繁にセックスするようになって、蒼香の身体は敏感に反応するようになってい
た。志貴が何もしなくても、蒼香が欲情するだけで、自然に硬くなるくらいだった。
その乳首を、志貴は手を伸ばし、そっと摘んだ。案の定、蒼香はぴくりと動きを止めるた。志貴のモノを頬張ったまま、むー、と睨んでくる。志貴は、蒼香の
乳首をさわさわと撫でる。きゅっと摘み上げ、そのまま乳暈を愛撫し始めた。蒼香の顔に、つらそうな色が浮かんだ。目線を更に落とすと、ぺたりと女の子座り
した足の合わせ目、暗い翳りの奥が、濡れて光っているのが見えた。光は、とろりと蒼香の太腿から零れ、床に滴り始めている。蒼香の蜜の匂いがきつくなって
くる。
「うはっ」
お返しというのか、蒼香が志貴の裏筋を大胆に責め始めたので、思わず声を漏らした。蒼香は、志貴の裏筋に何度も舌を這わせ、袋をなぞり、蟻の門渡りにま
で舌を這わせる。志貴のペニスはカチカチに強張り、根元のマグマのうねりが高まるのが分かった。気を緩めると爆発しそうだ。宙空に目をやって、括約筋を引
き絞り、なんとかやり過ごす。だが、蒼香はなおも責め続ける。袋ごと睾丸を口に含んでしまうと、口の中で転がした。
「蒼香、そろそろ――」
熱い息を吐きながら、志貴はいった。このまま口に出すのか、それとも蒼香の中で出して欲しいのか、問うたつもりだった。蒼香はとろんとした目を上げると、二人だけにしか分からない会話で、このまま出して欲しいと告げた。
「――はぁ」
荒い息をつきながら、志貴は立ち上がる。蒼香は中腰になると、志貴のモノにむしゃぶりついて離れない。志貴の限界が近いのを察したのだろう。蒼香の頬も
紅潮して、艶やかな官能に染められている。跪いたその太腿を、蒼香の蜜が伝ってゆく。蜜には、志貴の精液もたっぷり混じっていた。このホテルで、二人は既
に三度も交わっていた。部屋に入るなり、蒼香を壁際に立たせ、まず着衣のまま、後ろから攻め立てた。その中で果てると、今度はテーブルに座り込み、蒼香を
膝に抱え上げて、じっくりと交わった。そして二度の射精の余韻も冷めぬ内に、二人は素っ裸になり、今度はベッドで愛し合った。体位を変えながら、志貴は蒼
香の蜜をたっぷりと搾り取ると、蒼香の子宮頚管にまで届くくらい、激しく中で果てたのだった。三度の行為で、蒼香の膣には、志貴の精液がたっぷり溜め込ま
れている。それも掻き出さないまま、再び淫らな行為にのめりこんでいる。
自分はおかしいんじゃないだろうか。志貴はふとそう思った。志貴には、秋葉という最愛の、大切な恋人がいる。だというのに、蒼香という別の娘と、こんな
激しい行為に耽っているなんて。時々我に返って、自分の不誠実さ、罪深さに嫌になる。だが、今この瞬間には、その嫌悪感に似た感情も、極上のスパイスとし
て作用してしまう。
「――」
また欲求が高まってくる。堪えるために、声も無く、熱い吐息を漏らすだけだ。蒼香は、もうクライマックスが近いことを悟り、軽く歯を立てながら、志貴のモノを何度も飲み込み、吐き出している。
思わず拳を握り締めてしまう。括約筋を締め上げて、射精衝動を堪えようとするのだが、今度の波は超えられそうにない。もう、睾丸からペニスの根元まで、熱くどろどろに溶け合ってしまっている。
なにか湿った音がする。目を落とすと、蒼香は自分のオンナに手をやっている。きっと、硬く勃起したクリトリスを刺激しているのだろう。その手の動きは忙しない。
とうとう蒼香は、志貴のモノを咥えたまま、悩ましげな声を上げ始めた。蒼香も、今にもイキそうだった。それは志貴だって。
「蒼香――」
思わず名を呼んでいた。もう限界を超えていた。蒼香は、眉根を寄せると、悩ましげな顔のまま、志貴のモノを喉の奥まで、何度も飲み込んだ。蒼香の舌が、
志貴の敏感な裏筋を刺激する。もう堪えきれない。頭の奥に白い閃光が走る。志貴は限界を越えた。思わず呻く。ペニスが脈動すると、その根元の熱く、どろど
ろになったものが溢れてきた。それは志貴の先端から、蒼香の口中へと噴出した。
蒼香は、うっ、と嘔吐きかけた。が、舌で受け止めると、すぐに恍惚とした表情で、飲み下してゆく。志貴の精液を、喉を鳴らして飲み干してゆく蒼香。尿道
から精液が溢れるたび、志貴は頭が真っ白になるような快感を味わっていた。睾丸がギュッとせり上がり、精嚢から一滴残らず搾り出される勢いだ。脈動は何度
続いたか。志貴は真っ白になった頭で、ようやく蒼香を意識した。蒼香は、トロンとした目を合わせてきた。唇を離すと、志貴のペニスとの間に、精液の糸が引
いた。しかし志貴は、ペニスを少し突き出し、蒼香になにかを促した。蒼香も心得ている。もう一度先端を口に含むと、強く尿道口を吸った。志貴も括約筋を強
く締めると、最後の一滴を搾り出す。それを吸い出される快感は、立っているのに耐えられないほど強いものだ。思わず声を上げてしまった。
荒く息をつきながら、志貴はベッドにぺたりと座り込んだ。蒼香は口元に垂れた精液を、フフッと笑いながら舐め取っている。その蒼香を膝の上に抱き上げる
と、志貴は口づけを交わした。ねっとりと口元を這い回ると、舌を差し入れ、絡み合う。自分の精液の混じった唾液を混ぜ合わせ、それが糸を引くまでかき回す
のだった。
「志貴は、卒業したらどうするんだ?」
立て続けに行為して、あまりに汗をかいてしまった。喉が渇いたので、持ち込んでいた缶ジュースを空けていた。すると蒼香がそんなことを聞く。
「大学に進むよ。秋葉が大学には行けって五月蝿いからさ」
志貴は冗談めかして答える。が、実際のところ、秋葉の仕事を手伝ってやりたくて、大学に進むことにしたのだ。秋葉が背負っているものを、ほんの少しでもいいから、一緒に担ってやりたかった。
「そういう蒼香はどうするんだ?」
「まだ決めてないよ。働くのもいいかなと考えてるんだけど」
「やっぱ、音楽関係?」
「いや、デザイン方面も好きでさ」
「へえ」
それは意外な、蒼香の志向だった。そういえば、蒼香が身に着けているものはみんなシンプルで、シンボル志向のものばかりだ。そういう適正も、確かにありそうに思えた。
「いやさ、デザインはデザインでも、街のグランドデザインみたいなのに興味がある。都市計画ってのにさ」
「じゃあ、秋葉の会社は? 傘下に大手の不動産屋や私鉄を抱えてるから、大きな開発計画がいくつもあるらしい」
そんなことを話しながらも、あの秋葉がそんな大きな存在の中枢に居るというのには、今ひとつ現実味が湧かない志貴だった。
「遠野の手下になるのは業腹だけど、仕事は確かに面白そうなんだよな」
蒼香はまんざらでも無さそうだ。
「秋葉も、蒼香に助けてもらえたら嬉しいと思うよ。底意地の悪い性格も似通ってるから、きっとうまく行くさ」
「ほっとけよ。確かに遠野もあたしも性格悪いよ。でもさ、志貴にはいわれたくないね」
二人のことを良く知っている志貴にすれば、ただの冗談だ。だが蒼香はまともに受け取ったのか、つんとしてみせる。
「怒るなよ」
志貴は笑いながら、蒼香の手を引いて、ベッドに腰掛けた。蒼香と並んで座ると、その細い腰に手を回し、抱き寄せる。
「もう――」
蒼香はふてくされてみせたが、志貴が顔を寄せると、大人しく口づけを受け入れた。軽く、唇を羽のように軽く、触れ合わせる。蒼香の体温が感じられて、ぞくぞくする。手の中には一糸まとわぬ裸身が納まっているというのに。
「ん――」
舌をちろちろと突き合わせ、互いの舌に絡めて行く。蒼香の小さな唇に、舌を滑り込ませて、蒼香の唾液を味わう。自分の唾液を垂らしてやると、蒼香は舌を
鳴らして飲み込んだ。普段の蒼香は、恋人というよりは、むしろ異性の友人という位置にあって、志貴と完全に対等に付き合っている。でも、一度志貴の腕の中
に納まってしまえば、もう従順で可憐な恋人に変身してしまうのだ。志貴のリードに素直に従う蒼香は、純情可憐な少女だった。ベッドでも時にわがままを言う
秋葉に対し、ひたすら従順な蒼香の方が、よほどスレて無いように見える。まあ、志貴にとっては、どっちの娘も可愛くて仕方ないのだけど。
「凄い、またこんなにカチカチにしてるの?」
蒼香の、驚くというよりは、呆れるような声。その繊手が、志貴の肉茎を撫で回した。華奢な指が雁首に絡んでくる。そのさわさわという感触が、志貴の欲求
に響いた。蒼香の手の中で、それは余計に硬さを増してゆく。蒼香は、志貴の硬さを楽しむように、根元から先端へと、何度も擦り上げた。蒼香は興奮し始めて
いる。その身体に汗が光り、裸身からかぐわしい薫りが漂い始める。それは志貴の硬度を、ますます上昇させる。
志貴は、左手を蒼香の足の付け根へと滑り込ませていった。すべすべした内股を撫ぜると、淡々した恥毛の下に潜む淫花へと指を進ませてゆく。蒼香は、志貴の指が肌を愛撫する度に、微かなため息を漏らした。
すべすべした恥丘を愛撫すると、その合わせ目に指を滑らせた。指先にぬめりを感じる。蒼香の秘められた花弁は、もう蜜を垂らし始めていた。花弁にゆるゆると指を潜らせると、雌芯をゆっくりとかき回した。蒼香の顔が歪む。
志貴は指をバイオリンの弓に見立てて、蒼香のルビーをたっぷりとなぞり始めた。蒼香は低く啼いて、思わず志貴のモノを持つ手を握り締めた。
蒼香の裸身を抱いて、ベッドに寝そべった。目線を合わせ、互いの性器を愛撫しながら、淫靡に、淫らがましく、舌をちろちろと絡み合わせる。
蒼香の瞳は、欲情に濡れている。蒼香のようにクールな娘が、自分とのセックスに夢中になっている。それは志貴にはいまだに不思議に思えることだった。ただ単に、妹のクラスメートという間柄だったのに。
「うはっ」
蒼香の指が、志貴の尿道口を責め始めた。どんな男にとっても、ここばかりは弱点だ。蒼香の指は滑っている。蒼香は、自分自身の蜜を指に絡め、志貴のペニスに擦り付けている。蒼香の蜜の匂いがきつくなる。
志貴の指も、蒼香の女性器をなぞっている。蒼香の興奮を反映して、割れ目は緩み、果肉が弾けそうになっている。その縁には、ぬらぬらとした愛液が光っている。志貴の指が何度も潜った分、蒼香の雌芯は開いていた。
「どうしたい?」
蒼香の身体を奏でながら、志貴はそう聞いた。
「志貴の上に乗るよ」
蒼香はためらい無く答える。
志貴はにやりと笑い返すと、ベッドの上に、仰向けに寝転がった。
目を落とすと、自分の剛直が、天を突く勢いで反り返っている。それは心拍に合わせ、微かに揺れている。その向こうに、ベッドににじり寄る蒼香の姿が。幼
い少女のような、しかし確かに女でもある蒼香の痩身。きつく抱きしめたら壊れてしまいそうな肩の線が、胸のふくらみへと繋がっている。その向こうに細い身
体をよけいに細く見せている、抱けば折れそうなくらい細い腰と、やはり細いのに、女らしい曲線を見せているヒップラインに繋がっている。太腿の奥からは、
志貴の愛撫の結果が、とろりと光る幾条もの筋となって見えている。
蒼香は、ワクワクしているような顔をしている。志貴の上に跨る騎乗位は、蒼香に言わせればシックスナインに次いで恥ずかしい体位らしい。志貴と繋がって
いるところが丸見えで、しかも顔を背けることも出来ないからだ。だがそれが、強い興奮をもたらすようだ。今では蒼香のお気に入りだった。
蒼香が志貴の上に跨る。恥じらいと興奮が、その顔を輝かせている。自分の指で自分のオンナを押し広げながら、志貴の剛直の上に腰を落とした。なにかが粘
着してくる感覚と共に、志貴は蒼香に包まれてゆく。腰を落としきって、蒼香は、ん、と喉の奥で声を漏らした。志貴のものが子宮を突き上げ、オンナで感じて
しまったのだろう。
蒼香の、贅肉のまったく無い下腹に手を滑らせ、腰を支えてやる。蒼香は、志貴の腹に手を着くと、少しつらそうな顔で、腰を動かし始めた。すぐに、蜜壷を
かき回すような、いやらしい音がし始める。蒼香が腰を持ち上げ、落とすたびに、シリンダーとピストンのように、二人の器官が結びつき、引き抜かれる。既に
官能に支配され始めているのだろう、蒼香の中を志貴が往復するたび、蒼香は目を閉じ、喉の奥で声を漏らした。その可憐さと卑猥さの入り混じった顔も見てい
たかったけれど、志貴の目はついつい二人が結び合っている部分に向けられてしまう。視線は、蒼香の小さな、そのくせ驕慢そうにつんと尖っている乳首を過
ぎ、滑らかな下腹へと引き寄せられる。
蒼香の淫花は、志貴の肉茎に貫かれている。腰を落とすと、大きく開いた花弁の縁から蜜が溢れる。腰を上げれば、愛液をぬらぬらとまといつかせた、志貴の
ペニスが露になる。蒼香の花弁は、まるで雨に打たれた花のようだ。蜜に溺れ、とろとろに蕩けきっている。充血して、敏感になった花弁が擦れるからだろう。
それが志貴のペニスに連れて巻き込まれ、また引き出されるたび、蒼香のよがり声が高まる。
志貴は、蒼香の胸に手を滑らせ、小さな乳房を手に包み込んだ。鷲掴みにすると、指は小さくとも柔らなそれの中に沈みこんでしまう。乳首の硬さを楽しみながら、大きくこね回した。
「んっ――志貴、志貴ぃ」
腰を打ち振りながら、蒼香は意識が飛びそうになっている。白い喉を見せ、天井に向けてよがり声を上げ続けている。小さな唇の端から、唾液がつつっと滴り落ちた。
志貴も頭が混濁し始めている。全ての感覚が、蒼香の中に、ペニスに集まっているかのようだ。蒼香の肉襞と棹が擦れる感覚がたまらない。雌芯から引き抜か
れ、また亀頭に花弁が絡みつくたび、抑えようの無い声が漏れる。繋がっている部分に、熱くてどろどろしたものが集まっているのが分かる。もう何度も放って
いるというのに、今にも爆発しそうだ。志貴の袋までもが、蒼香の蜜に濡れている。それはシーツにまで滴って、ぐっしょり濡らしている。
志貴は、蒼香の尻に手を回すと、蒼香の動きに合わせ、その身を持ち上げ、また落とした。同時に、蒼香を下からも突き上げる。力強いストロークで蒼香を攻
め立てる。規則的に続く粘液質の音が、淫靡な行為を彩っている。そのレシプロエンジンのように凶暴な行為に、蒼香は喘ぎ声をあげ続けている。
自分の腰の上で踊る蒼香の媚肉を意識しながら、志貴は最後のピストン運動を繰り返した。今にも決壊しそうなのを、歯を食いしばって堪える。そうして堪えれば堪えるほど、蒼香の中に放つ快感は高く、そして量も多くなるのだ。
「んぁ!」
不意に、蒼香は身を強張らせ、打ち震わせる。その手を置いている志貴の腹に、爪を立ててしまうくらいに。蒼香の淫花が震えた。
「ああん、志貴!」
蒼香の肉襞が蠢き、こりっとした子宮口が志貴の先端にこね回される。新鮮な蜜が、とろりと溢れてきた。
蒼香が達したことを知った志貴は、ストロークの頂点で自分を緩めた。頭が割れそうなくらいの快感とともに、蒼香の中に精液が打ち込まれる。歯を食いし
ばっていても、声が漏れてしまう。抽挿の度に白濁液を搾り出されながら、志貴はそれが収まるまで、蒼香をなおも突き上げ、そしてかき回した。袋が、なにか
別の生き物のようにせりあがる。
擦られ、吐き出し、呻くうちに、ようやく脈動が収まる。蒼香は肩をがっくり落としながらも、最後の官能を味わいつくすように、またヒップに力を込めた。
激しく締め上げられ、それから緩み始めていた蒼香に、志貴はまた締め付けられた。それに合わせて、志貴は括約筋を締め上げ、尿道に残った雫を、蒼香の中に
搾り出した。
ふっと弛緩した時間が流れた。どちらとも無く我に返ると、満足そうな笑みを交わす。
蒼香は、玉の汗を拭うと、志貴から離れた。結び合っていた部分から、二人の体液が入り混じったものが滴り落ちる。蒼香はそれに構わず、既に二人の汗と体液で湿っている、シーツの上に身を投げ出した。その身を、志貴は両手に包んでやった。
荒い呼吸が収まると、蒼香は志貴の胸に這い登って、くすっと笑った。
「今のも、凄く良かったよ」
「ああ」
二人は、身体の隅々まで愛し合った者同士だけの情愛を込めて、しばらく抱き合って、汗が引くのを待っていた。
「まったく、志貴はタフだよ」
「それに付き合う蒼香だって、かなりのもんだろう」
しばらくベッドに横たわり、少し戯れるように愛撫しあった後で、二人はシャワーを浴びることにした。部屋はダブルだが、シャワーは一人用で狭い。その狭
い浴室で、身体を重ねあうようにして、シャワーを浴びるのだ。志貴は本当にシャワーを浴びるだけだが、蒼香は丁寧に石鹸を擦り付け、髪を洗っている。どう
しても、汗のにおいが気になるのだという。蒼香の汗のにおいは、志貴には心地よいものなのだが、当人はそうでもないらしい。こういう辺り、やはり育ちのい
いお嬢様なのだと分かってしまうものだ。その狭い浴室で、肩を並べて、そんな会話を交わす。
「わたしは専ら受身だろう。でも志貴は、もう五回も出してるじゃないか。だってのに、もう――」
蒼香は膝を上げると、志貴のモノをちょいちょいとつついた。それはいつの間にやら、もう筋張って硬くなり始めている。
「仕方ないだろう。すぐ横に蒼香の身体があって、しかもシャワーのせいで余計に艶かしいんだからさ」
流石に自分のサカリぶりが恥ずかしくなって、志貴は慌てて背中を向けた。実際、蒼香が髪を洗うしぐさで、その胸も、細い腰も、太腿の間に咲いた淫花も目
に入ってしまうのだ。およそ健康な男が、これで勃起させないわけがない。だが確かに、既に何度も放っているというのに、なおも勃起させてしまうのは、呆れ
た絶倫振りというしかない。
「ほら、洗ってやろうか」
蒼香はシャワーを向けながら、志貴をからかうようにいう。
「いいよ、もう」
今のまま蒼香の手に委ねたら、また蒼香の手の中で暴発しそうだった。それは御免だった。やはり蒼香の中で果てたい。蒼香と交わって、その肉を味わいつくしたかった。
「それにしても、志貴は本当に絶倫だよな。わたしは他の男のことを知らないけれど、こんなにタフな奴は他にいないんじゃないのか?」
志貴の背中で、蒼香はくすくす笑っている。実際、志貴は蒼香の中で十回以上放ったことがあるし、少ない時でも三回は果てている。自分でも嫌になるくらい
の絶倫ぶりだが、おかげで蒼香と秋葉を騙していられる面もあるのだ。こんなにタフだから、秋葉をたっぷりと抱いてやった次の日でも、蒼香を抱くことが出来
る。流石に精嚢の蓄えが乏しくはなるのだが、それをごまかせるくらいの行為に及ぶことが出来る。
このところ志貴は、秋葉と蒼香を交互に抱いている。蒼香を抱くのは、毎週水曜日のデートの時だ。蒼香の好みのライブを見た後、ホテルで愛し合う。一方、
秋葉は毎週末に帰宅するので、土日の夜はたっぷりと可愛がってやっている。秋葉の身体も、蒼香に似て、すいぶんスレンダーだ。自分でも女の子らしくないか
ら嫌だというくらいなのだ。でも、志貴の目には、十二分に女の子らしく映る。一番気にしている薄い胸だって、ちゃんと盛り上がりがあるし、触ると柔らかく
て心地いい。それに、秋葉は凄く敏感だ。全身が弱点なんじゃないかと思うくらい、志貴の愛撫に敏感に応えてくれる。志貴の手の中にすっぽり包んで、手と唇
とで愛撫してやると、その肌は艶やかな桜色に染まってゆく。それがあまりに魅惑的なものだから、志貴は秋葉を抱く時、抱きしめたままじっくり愛撫してやる
ようにしている。志貴の愛撫だけで、何度も絶頂に達してしまう秋葉が愛しい。
「あのさあ、もうどうにもならないんじゃないか?」
背後から蒼香が手を伸ばし、志貴のモノを掴んだ。苦笑しているようだ。実際、志貴のモノは、いよいよどうにもならないくらい勃起している。しかしそれ
は、秋葉のことを考えたからだ。志貴はまた、別種の罪悪感に苛まれた。だというのに、志貴のモノは、蒼香の手の中でカチカチになっている。
「ねえ、しようよ?」
蒼香は唆すようにいう。身体を押し付けてくるので。その硬くなった乳首が、志貴の背中に当たっている。志貴は、蒼香に握られたモノが、心拍に合わせて跳
ねるのを感じた。自分の絶倫ぶりにあきれ果てながらも、志貴は振り向いて、蒼香の裸身を抱きしめた。腕の中に、蒼香の身体がすっぽりと納まる。十六歳の少
女の艶やかな裸体。
その、期待に満ちた目と目とを絡みあわせると、志貴は蒼香の顔を俯かせ、口づけを交わした。唇を触れ合わせながら、舌先をちろちろと突き合せる。ねっと
りと絡み合わせながら、蒼香の口中に唾液を流し込んだ。蒼香は濡れた音を立てて、それを飲み込んだ。志貴はさらに、蒼香の舌を吸い出すと、その裏を舌先で
探った。
「んー――」
息が切れてきたのだろう、蒼香は額に皺を寄せ、辛そうな顔になった。志貴は舌をするりと抜くと、蒼香の気道を開放してやった。蒼香は息をつく。志貴は、蒼香の口元に垂れた唾液を、丹念に吸った。
手も働いている。滑らかな背中を滑り落ちると、両手で蒼香のヒップを抱え込んだ。志貴の手を感じて、蒼香は熱いため息をもらした。
蒼香の身体は柔らかい。蒼香にせよ秋葉にせよ、こんなに細いのに、抱き心地は柔らかい。身体のどこにも猛々しい部分がない。抱きしめると、そのまま壊れてしまいそうだ。
志貴は、蒼香の白桃のようなヒップに手を這わせた。少年のそれのように引き締まっているのに、手に吸い付くような感触がたまらない。
撫で回しながら、左右に押し開くと、指を割れ目に滑り込ませた。すると、蒼香が睨みつけてくる。蒼香は、ここを責められるのが苦手なようだ。どうしても
不潔に感じるという。しかし志貴は無視すると、指をそのまま進める。指先が窄まりに触れると、蒼香は顔をしかめ、背けた。が、志貴の指はそのまま素通りし
てゆく。
「――」
蒼香は、甘いため息をついた。志貴の指は、ヒップの割れ目を進むと、会陰部を撫で、そのままオンナへと滑り込んできたからだ。
中指で、蒼香の割れ目をなぞる。もう一方の手は、蒼香のヒップの丸い線を、ゆっくりと愛撫している。いつもと違う愛撫に、蒼香は少し戸惑って見えた。
「どうした。しようよって言ったの、蒼香の方だろう?」
志貴が少しからかうように言うと、蒼香は「もう――」と少しむくれて、その顔のままで志貴に口付けをしてきた。蒼香の細い背中を抱きしめて、互いに唇を
貪り合った。濡れた音を立てながら、しつこく舌が絡み合う。なにか、軟体動物の交尾を思わせる淫らがましさで。蒼香の唇から唾液を吸い出すと、お返しに舌
を差し込んで、綺麗な歯列の裏をなぞってやる。
「んー」
舌と唇の快感というより、淫らな状況に酔って、蒼香の美貌は少し紅潮している。
志貴は、片手で蒼香の胸を愛撫し始めた。ささやかな胸。数値的には秋葉よりも小さいのだと、蒼香は少し残念そうにいうものだ。しかし、手の中に収める
と、確かにふくらみがある。志貴の手の中で、柔らかに形を変える乳房。その手に吸い付くような感触を楽しむ。そしてその先端で反抗しているような、硬く
なった可憐な乳首の感触も。
人差し指と親指で乳首を摘むと、きゅっと捻ってやる。痛みと快感に、蒼香の表情が険しくなった。
「――馬鹿。伸びちゃったらどうするんだよ」
答えの代わりに、志貴は浴槽の縁に腰掛けて、蒼香の乳首に吸い付いた。ちゅっ、と、わざと音を立てて吸う。強く吸うと、蒼香は甘い吐息を漏らした。志貴
は、可愛らしく自己主張している可憐な乳首を吸出し、ざらざらした舌の平で舐った。蒼香の声が少し高くなる。幼い少女のそれのような、しかし確かに女とし
て欲情し、反応しているそれを吸うと、志貴の背中に背徳的な歓びがぞくぞくと這い登ってくる。
愛は公平にといわんばかりに、もう一方の乳首にも吸い付いた。乳暈を舌先でなぞり、つぼみのような乳首を舌先でせせり出させる。乳首全体が志貴の唾液で
十分濡れたところで、その全体に吸い付いた。乳暈ごとくわえ込むようにすると、口の中でつぼみをじっくりとしゃぶった。蒼香のあえぎ声が大きくなってき
た。
蒼香の身体がぴくんと跳ねた。志貴の指が、蒼香のオンナへと滑り込んできたからだ。蒼香のそこは、子供っぽいふくらみが消え、女らしく、しっとりして、
平らな翳りへと変わりつつある。志貴の指は、蒼香の小股を滑り、そこに咲いている淫花へと触れた。蒼香のオンナは、いつもならつつましく閉じられている。
なにせ、オナニーの経験すら乏しかったというくらい、蒼香は節制してきたからだ。だが今、志貴との行為が続いたため、それは緩み、花びらが顔を出してい
る。それはまさに、今まさに咲き誇ろうとしている淫花。
志貴は、その開いた割れ目を浅く、なぶるように抉った。軽く指を潜らせただけなのに、蒼香の顔が歪んだ。
「志貴、んっ、そこは乱暴にするなって――」
蒼香の声は、志貴が乳首を軽く噛んだ衝撃で、途絶えた。小さな乳首を軽くなぶると、蒼香は思わず口元に手をやりながら、啼いた。
「もう……」
蒼香はなにか諦めた顔になっている。普段の付き合いでは、二人は対等だと思っていた。だが、いざホテルで愛し合い始めると、蒼香は志貴にいいようにしてやられるばかりだった。志貴は、蒼香の顔を見上げると、にやっと笑った。
志貴は、蒼香の前に跪いた。蒼香は心得たもので、志貴の両肩に手をかけ、腰を少し突き出した。志貴は、蒼香の恥丘を指で拡げると、もの欲しそうにひくついている花弁から吸い始めた。
「あ、ん――」
蒼香は甘い声で啼く。あのクールで、颯爽として、ハンサムな蒼香が、可愛らしい女に変わった瞬間だった。
志貴は、舌先に蒼香のぬめりを感じていた。蜜は奥から溢れ始めている。胸を弄るだけで濡らしちゃったんだね――と言葉でなぶってやりたくなったが、それはやめた。蒼香の蜜が、あまりに美味だったし、淫花を吸うのに夢中だったから。
シャワーを浴び始めたときに、蒼香は膣から志貴の精液を掻き出していた。二人とも、危険日前後では避妊具を使っていたが、それ以外の日では中で出すのを
好んでいた。志貴にとっては、蒼香の中で果てることは、蒼香を目一杯愛してやった証だった。妊娠の危険性を意識してはいるのだが、蒼香の中で果てる瞬間の
充実感は、それすら凌駕してしまう。そしてそれは、蒼香にとっても同じことだろう。『志貴のが、わたしの奥に溜まってる感じがたまらない』とは、ふと気を
抜いた時に漏らした言葉だった。自分の膣から大量の精液を掻き出す、呆れたような、それでいて嬉しそうな蒼香の顔が忘れられない。
志貴は、蒼香の膣口に、舌を滑り込ませた。媚唇が押し広げられ、小さく窄まった膣口も開かれる。この時まで、志貴のオトコを何度も受け入れてきた雌芯
に、志貴の舌が這い回る。蒼香の身体が硬直し、可愛らしいあえぎ声が漏れた。志貴の鼻は、蒼香のルビーと触れ合っている。蒼香の興奮を表して、ルビーは顔
を現している。その敏感な部分を、志貴はわざと鼻の頭でつつき、刺激する。その度に、蒼香の身体は、電流に触れたかのように、軽く反応する。もう、蒼香の
花びらは、蜜に溺れ始めていた。それを、志貴は音を立てて吸った。わざと下品な音を立てながら。蒼香は、快楽に目を潤ませながらも、志貴を睨む。志貴は知
らぬ振りで、蒼香の媚唇を舌先で舐った。そのやんわりした刺激に耐えられないのか、蒼香は頤を突き上げて、腰をひくつかせた。蒼香の限界を見抜いた志貴
は、いつもならもっと後回しにしてしまうご褒美を、蒼香にくれた。蜜に濡れてとび色に輝いているルビーに口付けし、強く吸ったのだ。
「あん!」
軽いアクメに達して、蒼香の花弁から蜜がとろりとあふれ出した。びくんと跳ね上がり、それから腰が砕けて座り込んでしまう。志貴は、そんな蒼香を抱きとめた。
胡坐をかいて、その上に蒼香を抱き上げる。そして口付け。
「ん、んー――」
たった今の絶頂によって、意識が飛びかけていた蒼香は、志貴の口付けに現実に引き戻されてきた。上気した目と目が交わされ、唇と唇の間でセックスの暗喩のように、舌と舌が淫らに絡み合っている。
志貴の手が、蒼香の腰に回された。蒼香は自然に足を開く。大きく開かせると、蒼香の蜜に濡れた淫花も開いた。その腰を抱き寄せ、カチカチになったペニス
を片手でつかみ、狙いを定める。釣り目勝ちの蒼香の顔は、こんな時には妙にまじめ腐って見える。蒼香の緊張した顔を見ていると、志貴の中に悪戯心が怒っ
た。ニヤリと笑うと、志貴はペニスを蒼香の膣ではなくて、その上に顔をのぞかしているルビーに押し付け、押しつぶしたのだ。
「ひん!」
蒼香は驚きの声を上げる。その直後、蒼香の花弁から、濃密な愛液がとろりと溢れ出した。
「なにするんだよ、もう。志貴の馬鹿」
怒り顔の蒼香は可愛い。特に素っ裸で抱き合っている時は。志貴はそんな蒼香が可愛くて、また唇を重ねてしまった。
甘いため息を漏らす蒼香の腰を、志貴は少し抱き上げて、それから自分の腰に落とした。蒼香の雌芯を捜す必要は無かった。志貴は、蒼香の身体を知り尽くし
ている。志貴の先端が、居心地のいい窄まりを見つけた。そのまま、わずかに腰を動かしながら、蒼香を抱きしめる。肉茎が、花弁を擦りながら、蒼香の中に打
ち込まれてゆく。ぬるりとした蜜壷を、ペニスが押し広げてゆく。志貴は思わず目を閉じ、蒼香の膣壁が与える快感を、じっくりと味わった。濡れた音を立て
て、ペニスは蒼香の膣に、寸分の隙も無くはまり込んでいる。雁首にぬるりとまとわりつく、膣壁の感触がたまらない。
「――ん、志貴ぃ」
「ああ、蒼香」
二人は名を呼び交わすと、気を合わせて、ゆっくりと律動を開始した。志貴は蒼香の腰に手を回し、蒼香は志貴の肩に手をかけて。志貴が蒼香を持ち上げ、蒼
香が自分の身を持上げる。互いの性器が引き抜かれ、結びつく度、粘液質のいやらしい音を立てる。そして、結び合っている部分から、ため息が出そうな快楽が
発せられる。
志貴は、蒼香のオンナを貫き、引き抜き、また挿入した。その律動は、二人の快楽を高めてゆく。目を落とすと、蒼香の淫花と、志貴の肉茎とが繋がり、蜜をまといつかせながら引き抜かれる様が見える。
蒼香の目は淫楽に濡れている。志貴は見つめあいながら、蒼香のオンナにピストン運動を繰り返した。蒼香の膣襞が、志貴の肉茎にまとわり着いて来る。引き
抜くたび、はめ込むたび、蒼香の花弁が巻き込まれ、また引き出されてくる。その花弁がまとわりついてくる感覚もたまらない。一番深いところで、蒼香と一つ
になっているのを実感できるから。その花弁は、まだ未成熟で肉が薄いものだったが、蒼香の興奮を反映して、充血して、ぽってりと膨らんでいる。それが志貴
のペニスに擦られるたび、蒼香は愛らしいよがり声を上げた。花弁はシャワーの湯とは違う、もっとぬめる液体にまみれている。それは蒼香の内股にまで塗り拡
げられて、まるでバターを塗ったようだ。そこから立ち上る蒼香の淫臭が、さっきまで石鹸の匂いに満ちていたバスルームを、二人の異空間へと変えてしまっ
た。
「志貴ぃ、いいよお、志貴ぃ――」
蒼香は切なげに呻いている。普段のハンサムな彼女からは考えられないくらい、甘く、艶やかだ。志貴は、片手を蒼香の臍から滑らせて、左右の乳房を揉みし
だいてやった。すっかり敏感になった柔肌には、それだけでも快感なのだろう。蒼香と結びついている部分に、とろりとした新しい蜜が溢れるのを感じた。
蒼香の蜜壷が、次第に緩んでくる。たっぷりと溢れる蜜が、二人のリズムを滑らかにする。もう、志貴の先端に、なにかコリッとしたものを感じている。蒼香
の一番奥まで当たって、その子宮口を感じているのだ。それが、志貴を余計に高ぶらせる。このまま放ったら、志貴の精液は、蒼香の子宮まで確実に届くだろ
う。蒼香は健康な女の子なのだから、受胎能力は高いはず。危険日は外しているものの、それは蒼香の自己申告に基づいている。危険日以外にだって妊娠の確率
はある。もしもそうなったら――
自分には、秋葉という最愛の人が居る。一生を共にするのは秋葉だ。でも、蒼香のこともどうしようもなく愛している。このまま達し、蒼香を妊娠させてし
まったら……。その危険な考えは、志貴にどうしようもない焦燥感と、救いがたい快楽とを、同時にもたらしている。
「感じるよ、蒼香の子宮」
そんなことすら口走っている。もう、肉茎の根元に、溶鉄のように熱いものが煮えたぎっているのが分かる。
「志貴のも感じる。志貴のに、志貴のに小突かれてるよ」
蒼香もそう口走った。もう、意識が飛ぶ寸前のようだ。
蒼香は、志貴にしがみついて、唇を求めてきた。二人の唇がふれあい、もどかしげに舌と舌が絡み合う。志貴はなにかの儀式のように、蒼香の舌へと唾液を垂
らしてやった。蒼香は、ほとんど反射的にそれを舌で受け、飲み込んだ。志貴の唇が、蒼香の乳首をついばむ。軽く歯を立てると、蒼香は嬌声を上げた。志貴の
ペニスは、蒼香の中で鉄柱のように強張っているのに、その形が分からないくらい溶け合っていた。二人の距離がゼロになって、今は誰よりも愛しくて、二人の
他にはなにも存在しない瞬間だった。二人の粘膜は溶け合って、一つになっている。我慢しすぎて、頭の中がじんじんしてくる。早く、蒼香の中に放ちたい。
「蒼香、いくよ」
「うん、中に来て」
もう抑えきれないと悟った志貴は、蒼香にそう告げると、最後のストロークを開始した。技巧も何もなく、蒼香の裸身を持ち上げ、自分の腰へと落とす。稚拙
とさえいえる行為は、しかし最高度の快感をもたらした。肉茎は、根元から先端まで蒼香に絞り上げられ、頭の奥に火花が散りそうだ。快感が限界を超える。蒼
香の目尻から、快感のあまりに涙が零れた。
くぅっ――と呻きながら、志貴は蒼香の一番奥に放っていた。ぶつぶつと、ゼリーのように濃い精液が、蒼香の子宮口に叩きつけられる。
「あひん!」
それを感じた瞬間、蒼香も達していた。蒼香の膣がきゅっと窄まり、志貴の精を受け止める。膣奥に、熱いものが満ちてゆく。
「志貴、志貴ぃ!」
蒼香は、子宮を熱いものに侵されてゆく快楽に、意識を真っ白にしながら叫んでいた。
脈動にあわせ、蒼香の裸身を抱きしめたまま、志貴はゆるゆるとストロークした。脈動が収まりかかると、一番深く繋がって、それから括約筋を引き絞った。尿道に溜まった一番熱い精が搾り出され、蒼香の膣奥に落ちてゆく。
バスルームで、なおも座位で繋がったまま、志貴は蒼香の裸身を愛しげに愛撫した。蒼香はようやく顔を上げると、志貴と顔を合わせ、フフッと苦笑のようなものを浮かべた。志貴も疲れた笑みを返すと、また蒼香のうなじに手をやって、ねっとりした口づけを交わしたのだった。
ベッドに戻る。いつもは身体に付いた水滴さえも拭わないで飛び込むのだが、今日はじっくり時間を掛けてタオルで拭った。蒼香にすれば、志貴の欲求を醒ま
す意味があったようなのだが、逆効果だった。志貴はさっさと身体を拭うと、ベッドに座り込んで蒼香を眺めている。蒼香は髪をややぞんざいに拭くと、顔から
そっと拭き始めた。皺を作らないように、傷つけないように。小さな頃から、そう教えられてきたのだろう。あるいは、たくさんいるらしい使用人たちが、そう
して彼女を大切にしてくれたのだろうか。
なんだかんだいいながらも、蒼香は良家のお嬢様だった。気を抜くと見せるしぐさが、とても上品で可愛らしい。それなりに大切にされていたのだと分かる。そのお尻をそっと拭う時、ふと志貴の方に目を向けた。なにやら怒っているようだ。
「なにジロジロ見てるんだよ」
その、少年のように引き締まった、可愛いお尻を隠しながら、蒼香は怒った。
「蒼香のお尻を見てるんだけど」
志貴はしれりといった。実際、まだ水滴が踊っているそこは、今すぐむしゃぶりつきたくなるくらい、可愛らしくて、魅力的だった。ハンサムな蒼香を裏切っている、可愛らしいお尻。
「だから、さ」
蒼香は、なにか呆れたような顔になった。
「さっきから何度も目合ってるじゃないか。あたしの身体なんて隅々まで味わいつくしたろう? それなのに、たかが裸を見せたくらいで、もうそれは無いだろう」
蒼香が目線で示す先、志貴の股間には、もう肉茎が屹立していた。それは、もう何度も放っているとは信じられないくらい、先端まで充実し、隆々と反り返っている。
「だって、蒼香の可愛い体がすぐ目の前にあって、お尻なんてすぐにはめて欲しそうにしてるんだぜ。男なら勃たないわけないよ」
「ば、ばか。わたしはそんなに淫乱じゃない」と、蒼香はますます怒る。それが可愛くて、志貴はくすくす笑ってしまった。まるで、どこかのお嬢様そっくりだ。なるほど、親友同士というのも分かる。
蒼香は本当に腹を立てたのだろう。無言で身体を拭き終わると、さっさと下着を身に着け始めた。つんと澄ました表情が、しかし年齢相応の可愛らしさだったので、志貴はくすくす笑いながらそれを見ていた。
愛用しているスポーツ用のブラ、パンツを身に着けると、最近穿いてくれるようになった黒のミニスカートを腰に巻いて、ジッパーで止める。後は革ジャンを羽織れば、そのままホテルから出て行ってしまえるだろう。
蒼香は、革ジャンを手に取ると、志貴の方にチラッと目をやった。努めて顔に出さないようにしてはいるが、蒼香が密かに怒っているのは分かった。どうして
止めてくれないの、と。いつもなら完璧なポーカーフェイスを作れる蒼香が、自分との色事では素直すぎるくらい顔に出してくれる。志貴にすれば、嬉しいやら
可愛いやらだった。
「な、なんだよ大将。はやく服を着なよ。帰るんだろう?」
蒼香は、あからさまに不満そうに、しかし口だけはしかつめらしく、そういった。
「んー、でも、まだ時間は八時回ったばかりだし」
志貴は長閑そうに答える。蒼香は一瞬だけ、期待のちらつく目線を、志貴に送った。
「でもまあ、蒼香がもうその気なら仕方ないな。今日は早く帰ろうかな」
志貴はそういいつつ、ベッドから立ち上がった。
「――」
蒼香は黙ってそっぽを向いた。あからさまに、落胆した様子が窺えて、志貴はますます嬉しくなってしまった。
「大将がそういうのなら仕方ないな。早く帰って、久しぶりに遠野や羽居をからかって遊ぶか」
蒼香は少しやけ気味に口にすると、テーブルの上のトートバッグに手を伸ばした。その身を、志貴は音もなく、一瞬のうちに抱きしめる。
「なっ――志貴、何のつもり?」
「なにって、蒼香が本当にしたいことをしてやるだけだよ」
言外に、蒼香の考えなんてお見通しだと告げながら、志貴は蒼香を背後から抱きしめた。
「本当は、まだ物足りないんだろう? 後何度も、俺のが欲しいんだろう? それとも、お嬢様は本当にお見限りかな」
「もう――馬鹿」
なにか諦めたような顔の蒼香だったが、同時に期待通りの展開に、ホッとした顔にもなっている。
肩越しに、蒼香と口づけを交わす。身体の柔らかい蒼香は、苦もなく志貴の口付けに応えてくれた。志貴は唇を離すと、首筋に舌を這わせる。蒼香の肌は、滑らかな乳の舌触りだった。微かな体臭も愛しい。
蒼香を窓の前に連れて行った。部屋はそこそこの広さだが、窓はかなり広い。外には三咲の夜景が広がっている。部屋の明かりの照り返しで、蒼香と、彼女を
抱きしめる志貴の裸身が見えている。もしも望遠鏡をこの部屋に向けているものがいれば、志貴と蒼香の姿もくっきり見えるはずだ。それゆえに、蒼香は最初の
うちこそ嫌がっていたが、今ではむしろ倒錯した喜びさえも感じているようだ。
「ん――」
蒼香は目を閉じて、微かに声を漏らした。志貴は、蒼香の痩身を背後から抱きしめたまま、唇をうなじに這わせる。志貴の手が、蒼香の胸に滑る。スポーツブ
ラ越しに、何度もこねるようにして愛撫する。こねくり回すほどに無いのは残念だが、ブラに擦れてすぐに乳首を硬くするくらい敏感なことを、志貴は知ってい
た。
蒼香は甘い吐息を吐く。志貴はスポーツブラをたくし上げる。低いが柔らかそうな、可憐な白い丘が現れた。乳房の先端に立つ、色の薄い乳首を指に挟み込ん
だ。蒼香の顔がわずかに歪む。ゆるゆると乳暈に指を滑らせるようにして、愛撫を続けた。蒼香の感想では、乳首を直接刺激されるのとは違う、もやもやした感
覚があるのだとか。
「はぁ――志貴――」
蒼香は感じ始めている。その事は、左右の指に挟みこんだ乳首の硬さで明らかだった。蒼香の乳首は硬くなり始めている。両の人差し指で、蒼香の乳首の先端を何度も擦ってやると、見る見るうちに指の間のつぼみが膨らんで、硬くなってゆく。
「もう、本当に志貴は好き者だな。なんであたしの貧弱な身体なんてものを、そんな喜んで愛撫するかな」
蒼香は呆れたような口ぶりだ。だがいくら装ってみても、女として愛される喜びは隠しようが無い。
「蒼香の身体は凄く綺麗だって、俺は何度も言ってるだろう? 本当は、みんなが見てる前で、自慢げに蒼香としたいくらいだよ」
「ばっ、馬鹿。本当に志貴は変態よ」
顔を赤らめながら、思わず女の子言葉になってしまう蒼香が愛しい。志貴は両手を上下に何度も滑らせて、蒼香の乳房全体を揉みしだいた。窓は、その度に喜びと切なさに顔を歪ませる、蒼香の美貌を映し出している。志貴の、蒼香の乳房をもてあそぶ手の動きがいやらしい。
「志貴、このままするのか?」
「うん、このまま蒼香のにハメるよ。だって、ミニスカ穿いた蒼香は、いかにも入れて欲しそうな感じで猥褻なんだもんな」
「もう、好きにしろよ」
呆れたような口ぶり。だが、志貴の淫らがましい答えに、蒼香は明らかに感じていた。黒いミニスカートから伸びる白い、すんなりした太腿が、もじもじと擦
り合わされた。その根元に咲いている淫花が疼いているのだと、志貴はちゃんと見抜いている。そろそろ、蜜が下着を濡らし始めているだろう。
また、肩越しに口づけを交わす。お互いに馴染み深い唾液の味。ざらりとした舌の平同士がすりあわされ、ねっとりと絡み合ってゆく。両手に蒼香の乳房を包
み、上下左右に、少し乱暴なくらいに揉みしだいた。要所要所で蒼香の乳首を摘んでやると、蒼香の唇が官能に震えるのが分かった。
蒼香とは正上位でしたかった。蒼香の中で動きやすいし、蒼香と見つめあいながら上り詰めてゆく感覚が、志貴にはたまらなかったのだ。唯一残念なのが、蒼
香の胸を自由に弄べないことだった。だから、蒼香の敏感な胸を存分に愛撫できるこの体勢が、志貴のお気に入りだった。同じように、やはり敏感な秋葉の胸
を、後ろからじっくり愛撫するのも好きだった。秋葉の場合、全身が弱点といえるくらい敏感だ。秋葉の寝室にある大きな姿見の前に立たせ、じっくりと胸を、
そして初々しいそのオンナを愛撫するのだ。志貴が許可するまで足を閉じることを許さず、背後から見せ付けるようにして乳首を愛撫し、慎ましやかな花弁を開
き、鏡の前の秋葉の秘密の隅々まで曝すのだ。言葉で、指先でなぶり続けると、秋葉は恥じらい、とうとう涙を流し始める。だが志貴の指に開かれた淫花は、と
ろりとした朝露に濡れている。その蜜が零れ、秋葉の足首に達するくらいになって初めて、志貴は秋葉を赦してやるのだ。愛おしさに胸が詰まる思いをしなが
ら、ご褒美に蜜を全て、足先から花弁まで、全部舌で拭ってやる。志貴の舌が秋葉の雌芯に打ち込まれる時、志貴の可愛い妹は全身を震わせ、あっけなく達して
しまう。そんな秋葉が愛しいから、ベッドに運んでやってからの行為は、自分でも獣じみていると思うくらいに激しくなるのだ。秋葉の身体の隅々に、自分の存
在を刻み付けたかった。秋葉を、自分で満たしてやりたかった。そして、獣のような自分に必死に応えてくれる秋葉が、どうにも愛しかった。
「あん、志貴」
秋葉のことを思い浮かべ、興奮を覚えているのに、志貴の手は蒼香のミニスカートを捲り上げている。細身でスラリとした肢体を持つ蒼香だから、ミニスカー
トが似合うのは当然だ。だが、普段の蒼香が性別を超越しているように振舞っているだけに、フェミニンなその姿はよけいにそそる。ほっそりして、少女のよう
なというより、むしろ少年のように見える蒼香の太腿。それがタイトなミニスカートから伸びている様は、もはや倒錯した快感すら感じさせる。
ミニスカートを捲り上げてしまうと、蒼香のやはりスポーツタイプのパンツが露になる。大人っぽく見える蒼香なのに、下着はずいぶん子供っぽい。実用本位で選んでいるから、らしい。
下着の股の部分はじっとり湿っていた。蒼香の割れ目に沿って、染みが拡がっている。布越しに、蒼香の薄い花弁が透けている。
割れ目をなぞり始めた。指先が蒼香の割れ目を上下に、何度もなぞる。その指が、陰唇や膨らみ始めている陰核に引っかかるたびに、蒼香の身体はわなないた。
「蒼香のって、割と下付だよな」
なんの気なしに、志貴はそう口にする。
「そ、そうなのかな」
性格的に、感じてしまっていることを悟らせたくない蒼香は、ぐっと堪えている。だが汗ばんだ体、そして志貴の指に合わせて震える花弁が、それを裏切っている。
「――」
志貴は口を噤むと、手を蒼香の下着に差し入れた。今のは失言だと気づいた。
志貴の指が下着に差し込まれる。そのまま、蒼香のオンナを開いてゆく。布地は厚めだが、じっとり濡れて肌に貼り付いている。蒼香の初々しい恥丘の形が、
あからさまに浮き上がっている。今日は志貴と何度も交わった後だから、いつもより緩み気味だ。それでも、少女のそれのようにつつましい。蒼香の恥毛は薄
い。蒼香のオンナの、いやらしい舟形の上端に、わずかに接している程度だ。ほとんどパイパンといっていい。そのつるりとした恥丘が開かれると、中の薄い花
弁も開く。それが下着に擦れるのだろう、蒼香は喉の奥で、抑えがたい嬌声を漏らした。志貴の指は、蒼香の雌芯に侵入した。自分以外の誰にも触れさせない、
蒼香の秘密の領域を、志貴は指先でじっくりと愛撫した。花弁の中心に指を這わせると、膣奥から溢れる蜜が、指を濡らした。それはとうとう、蒼香の白い内股
を伝い始めた。秋葉のそれよりキツめの、蒼香の蜜の匂いがする。
扇情的なミニスカートを、蒼香のヒップが半ば露になるまでめくり上げる。それから、最後の守りである下着を、足首まで引き下げた。下着の股の部分には、蒼香の蜜がべっとりこびりついている。
志貴は、蒼香を窓に向かって立たせると、後ろから抱きしめながら、その花弁をゆっくり開いて見せた。窓に、蒼香の淫らな部分がくっきりと映っている。志
貴の指に押し広げられた恥丘も、ぬめりを帯びて盛り上がる花弁も。その中央に、蒼香の雌芯が物欲しげにひくついている。可憐な裸身に釣り合わないような淫
肉が、朝露に濡れて光る淫花に見える。露が、蒼香の花弁から零れ、太腿をつーっと伝っていった。蒼香は、ため息を漏らした。自分の淫らな姿に、倒錯した悦
びを覚えているかのようだ。
「蒼香」
もはや欲求を抑えがたくなり、志貴は蒼香にささやいた。まるで夫婦のように、互いの身体を知り尽くしている二人だった。蒼香は志貴の意図を察すると、こくんと頷いて、窓に手を着いた。
志貴は、蒼香のヒップをなで上げながら、スカートの中に手を忍ばせてゆく。スカートの下で、志貴の手が卑猥にうごめくと、蒼香の顔に羞恥の色が点った。
もしかしたら外から見えているのかもしれないのに、こんなあられもない姿をさらしているなんて。蒼香は、最初のうちはこれを嫌がっていたが、やがて嫌々な
がらも従ってくれるようになっていた。嫌は嫌だが、どうにも興奮するのは否定できない、というのがその言い分だった。もしも羽居や秋葉に見られたら――と
考えると、ゾッとする反面、異常な興奮をも覚えるというのだ。それは志貴だって同様だ。
「蒼香のに挿れるよ」
志貴は、蒼香のヒップを掴んで、位置を決める。股間のモノは、まるで熱した鉄のように熱く、硬直している。何度交わっても、この瞬間が一番興奮する。蒼香と一つになる瞬間が。
ペニスの先端で、蒼香の花弁をゆっくりと掻き分ける。そのぬるりと滑る感覚にさらに高ぶりながら、志貴は先端を、そして竿を、蒼香の初々しい、桜色の蜜壷へとねじ込んでいった。
志貴の指で十分練られ、たっぷり蜜を分泌した蒼香の器官に、志貴の猛々しい剛直がねじ込まれてゆく。半ばまで埋め込むと、ゆるゆると引き抜き、そして再び奥までねじ込んだ。先端がきつい部分に当たり、自分のモノが蒼香の中を満たしたのを知った。
蒼香は、緊張しているヒップをひくつかせた。窓に映る蒼香は、額に皺を寄せ、自分に打ち込まれた志貴のオトコを、じっくり味わうかのようだ。志貴は、蒼
香の中でゆるゆる動いて、粘膜を馴染ませる。お互いの体温が一つになり、蒼香の体液が志貴のオトコにまつわりついている。もう、肉茎の根元に、熱いマグマ
の滾りを感じていた。
最初はゆっくり、小刻みに、すぐに大きく深々としたストロークを打ち込み始めた。引き抜く度、深く繋がる度、練乳をかき混ぜるような、卑猥な音がした。
志貴と蒼香が愛し合っている証だ。志貴は、徐々に律動を早めていった。最初は蒼香の粘膜と馴染ませるように、それから蒼香の肉の狭さを味わうように。
まっすぐに子宮めがけて打ち込むと、今度はわざと膣口をなぞるように浅くはめて行く。蒼香はオンナの奥から感じている。まだ十六歳の少女とは思えないほ
どに、その官能に揉まれる横顔は艶やかだ。蒼香が、喉の奥で声を漏らしながら、腰を揺らして喘ぐと、志貴を締め付けている果肉が、ゆるゆると蠕動する。志
貴の周りを、蒼香の媚肉がみっしり埋めてゆく。そして二人の動きを、かぐわしい蜜が滑らかにする。
「あん、志貴、志貴――」
蒼香は、頤を突き上げながら、何度も志貴の名を呼んでいる。蒼香の滑らかな背中が跳ね上がるたび、蒼香の中が余計に狭くなる。志貴は目を閉じ、まとわり
つく蒼香の媚肉を味わっている。マグマの滾りが、志貴の根元に渦巻いている。睾丸が、精嚢が溶けて、熱いものに交じり合ってゆくような感覚。強い官能に、
志貴は思わず声を漏らす。今にも限界を超えそうだ。
が、志貴は、意志の力を振り絞って、射精衝動を堪えながら、蒼香の奥をストレートに、何度も突き上げた。
「んーっ、だめっ!」
蒼香は背中を大きくしならせた。志貴は、片手を蒼香の胸に伸ばした。低いが、柔らかく迎えてくれる乳房を包み込み、その先端で自己主張している乳首を指
に挟む。蒼香は喘ぎながら、頭を打ち振った。もう一方の手は、二人が繋がっている部分に差し込まれた。志貴の肉茎が激しく抽挿されている部分、その根元
に、蒼香のルビーが顔を覗かせている。蒼香の身体を知り尽くしている志貴は、迷い無くそれを探り当て、ゆっくり押しつぶした。
「ひん!」
蒼香は弓のようにしなり、その細い腰を痙攣するように打ち振った。アクメに達したのだ。蒼香の肉が激しく締まって、志貴を官能の沼に引きずり込もうとす
る。だが、まだだ。まだ達するには早い。志貴は奥歯を食いしばって、蒼香の肉がもたらす快楽に耐えた。蒼香の蜜がじゅんと溢れ、その足首にまでとろとろと
垂れ落ちる。
はあ、と蒼香は腰が抜けてしまう。志貴は蒼香を抱きとめると、ゆっくりとその雌芯から肉茎を引き抜いた。蒼香の蜜にまみれ、ぬらぬらと光っているその先端からは、とうとう先走りが溢れ始めていた。
志貴は汗だくの頭を打ち振ると、やはり汗に濡れた蒼香の裸身を抱え上げ、ベッドに横たえた。
蒼香が身にまとっていた最後の布、つまりそのミニスカートを脱がせてしまうと、全裸にした蒼香の足を開脚させた。そして、花弁に優しく舌を這わせ始める。志貴との行為に揉まれ、敏感になっているそこは、すぐに愛撫に反応し、厭らしく蠕動し始める。
「志貴、今度はちゃんとくれよ」
志貴に吸われながら、蒼香は自分の胸を愛撫している。さっき、志貴が達しなかったのを気にしているようだ。
「女と違って、男はいくらでもイケるというわけじゃなんだよ」
「志貴は、あたしの中に平気で十回くらい出しちゃうじゃないか」
蒼香は、少し媚びるように。
答える代わりに、志貴は舌を雌芯深くに打ち込んだ。蒼香の身体がぴくりと反応する。
そのまま、粘膜を舌先でこそげるように、中がひりひりするくらいかき回す。
「ん、んー」
蒼香が甘い声でさえずる。志貴は、花弁をじっくりと舐め回した。充血して、敏感になっているそれは、志貴の舌に練られ、蕩け始めている。
「はやく、はやく志貴のをちょうだい」
自分の胸を愛撫しながら、蒼香が哀願した。志貴は蒼香のおねだりには滅法弱い。秋葉の場合、もっと苛めて、もっと可愛い秋葉を見たいという欲求が湧き起こるのだが。
「ああ、ご褒美だ。蒼香の中にちゃんとあげるよ」
志貴は蒼香の両膝を持ち上げ、左右に大きく持ち上げた。蒼香のオンナは大きく開き、蜜に濡れててらてらと光っている。こんな恥ずかしい姿勢なのに、蒼香の目は期待に濡れて、嬉しそうだ。
志貴は、蒼香の膣口に、自分の分身をねじ込んだ。さっきの蜜で濡れているそれは、なんの苦も無く、蒼香の雌芯と一つになってゆく。小刻みに前後しなが
ら、蒼香の中に埋め込んでいった。会陰部が触れ合って、二人は深く、深く繋がりなおした。志貴は、蒼香の両足を離してやると、蒼香の上に覆いかぶさった。
「今度は、ちゃんとくれよな、中にさ」
涙に濡れた目でそんなお願いをされて、断れるものではない。志貴は優しく微笑み返すと、蒼香の中で力強くストロークし始めた。
たっぷり練られた粘膜と粘膜は、馴染みあって一つになるかのよう。濡れた音を立てながら、スムーズな抽挿を誘う。自分の亀頭に、それに続く窄まりに、棹に、蒼香の肉襞が絡みつくのを、志貴はうっとりと味わった。思わず声が漏れる。
腰を落とし、少しこじるような感じで、蒼香の中をかき回す。志貴の先走りも溢れ始めているのだろう。二人が絡み合う音は、さらに粘度を高めていた。
「んー、んっ――」
蒼香のよがり声が高まる。
官能に揺れる美貌に顔を寄せ、蒼香の唇を吸ってやる。蒼香も夢中で志貴の舌を吸った。素直に舌を送り込んでから、迎えてくれた蒼香の舌に絡みつかせる。
上と下で繋がりあう。舌と舌、性器と性器が結び合っている。淫らがましい行為を満喫してから、志貴は舌をするりと引き抜いた。唾液を一滴、蒼香の舌に落とす。蒼香は無意識に、しかし嬉しそうに、それを飲み込んだ。
首筋に唇を這わせ、そのかぐわしい汗の匂いを味わった。蒼香の体臭は薄めだが、ほとんど無いに等しい秋葉のそれに較べれば、きつく感じられる。その柑橘類のような薫りを貪りながら、舌先で乳のように滑らかな肌をなぞり、唾液の跡をつけてゆく。
志貴は、蒼香の中をゆるゆると抽挿していた。ペニスは強張りきって、根元の精嚢はパンパンに張っている。今にも爆発しそうだ。だが、蒼香の裸身をギュッと抱きしめて、射精衝動を堪え続けた。
「凄いよ……凄いよぉ――」
蒼香は、涙を流しながら、志貴にしがみついている。志貴の背中に手を回し、両足も腰に絡みついている。
志貴は身体を起こすと、体全体で志貴のペニスに絡み付いてくるような蒼香の裸身を、大きなストロークで突き上げ始めた。
単純明快。志貴の先端を蒼香の子宮口に叩きつけるような、激しいピストン運動を繰り返した。ペニスはねじ込まれ、引き抜かれ、またねじ込まれた。志貴の烈しい愛を、蒼香は腰を突き上げて迎え入れている。
「志貴、わたし、もう、どこかに――」
蒼香は、高く高く上り詰めようとしている。切羽詰った様子で頤を突き上げている。
蒼香の中が震えた。切れ切れの悲鳴をあげながら、腰を突き上げた。蒼香は高く上り詰め、そして達したのだ。その媚肉が、絶頂の極みで志貴を締め上げる。
志貴の苦行に近い行為の終わりも同時だった。わざわざ括約筋を緩める要は無かった。限界を超え、それは志貴の先端から溢れ出した。奥歯を噛み締め、喉の
奥で唸りながら、志貴は蒼香の中に、熱いものを放っていた。そのゼリーのように濃い塊が、蒼香の子宮口に叩きつけられる。そのまま、蒼香の子宮へと打ち込
まれるくらいに。
頭が真っ白になりながらも、蒼香の裸身を抱きしめたまま、自分の脈動だけをカウントしつづけた。そしてそれが、二桁になった頃、ようやく迸りは力を失った。
荒く息をつきながら、最後に深々とつなげ直し、蒼香の膣奥へと、志貴は一番熱いしたたりを搾り出した。半ば失神しているのだろう。蒼香はぐったりしている。それでも、志貴の滴りを感じたのか。蒼香の器官は、身動ぎするように、蠕動した。
二人は、つながったままの器官そのもののように、一つになって抱き合っていた。後戯に、また蒼香と口付けを交わす。蒼香は、半分意識が飛びながらも、志
貴の愛撫を受け入れている。そうして、つながったままの部分が緩み、互いの鼓動が収まって行くのを、じっと感じていたのだった。
「遠野が、あたしと志貴の関係を知ったら、どう思うかなあ」
蒼香がそんなことをつぶやいたのは、さらに愛し合った後のことだった。流石に疲れ切ったのか、蒼香は志貴の胸に頭を預けたまま、放心したように天井を眺めている。
志貴は、ぎくりとしながら蒼香の横顔に目をやったが、蒼香は志貴の反応に気づいてないようだった。そもそも、志貴につぶやいたわけでもないようだ。
「へへ、それに、これは遠野には見せられないよな」
蒼香は、右手の薬指にはめた銀色の指輪を、満足そうに見ている。今日、ホテルに入る前、公園に出ていた露天で、蒼香に買ってやったものだ。おおよそ蒼香
につりあいそうに無い、安っぽいものだ。そこには『S+S』と刻まれている。志貴と蒼香、という意味だった。単に蒼香を喜ばせてやろうと思って、刻んでも
らっただけだ。だが、蒼香はそれ以上に深読みしているかもしれないと、今になって焦っていた。
「大丈夫さ。遠野には絶対見せないさ。屋敷で志貴がひどい目に遭うもんな。他の誰にも見せない。これは、あたしと志貴だけの秘密さ」
志貴の気持ちを察したのか、蒼香はなにか宥めるようにいう。きっといい奥さんになれるだろう、と志貴はなんとなく思った。
しばらく、どうでもいいようなことを話していたが、やがて蒼香は目を閉じると、間も無く寝息を立て始めた。
志貴は、そっと蒼香から離れると、枕もとのティッシュペーパーを手に取った。せっかくシャワーを使ったのに、その後でさらに愛し合ったから、二人の身体は体液でベトベトだった。汗はともかく、二人の淫液は始末しなければ。
自分のモノにべっとりこびり付いた愛液と精液を拭い取る。今日も蒼香と激しく交わってしまったんだなと思う。恋人同士が交わることに、なんの後ろめたさ
も無いはずだ。でも、志貴には秋葉という最愛の恋人が居る。なのに、その親友でもある蒼香と、男女の関係を続けるなんて――
「――」
思わず、ベッドに座り込んだまま、顔を覆って考え込んでしまう。自分の不誠実さが嫌になる。秋葉以外の恋人を作ることで秋葉を裏切り、秋葉との関係を告
げないままいることで蒼香をも裏切っている。秋葉と蒼香は親友同士だ。それは二人の言葉の端々から窺えた。だというのに、二人を同時に愛してしまうこと
で、二人をお互いに裏切らせるに等しい状況にまで至っている。
目を蒼香の横顔にやる。まだ十六歳、やっと女として開花し始めたばかりのその横顔は、思いがけないほど幼い。いつもの達観したような蒼香も、ベッドの上
での女としての蒼香も、そしてこんな隙だらけの幼い蒼香も、みんな愛しい。もっと蒼香を愛してやりたかった。二人の関係は、蒼香に迫られて、蒼香を意に染
まぬ政略結婚から救うためという名目で始まったものだ。でも、今は女として次第に成長して行く蒼香が、ただ愛しかった。
だけど――たったひとつだけ、蒼香に与えてないものがある。それは、『愛してる』という言葉。それだけは、面と向かって蒼香に与えたことが無かった。た
とえ蒼香が暗に求めても、それだけは蒼香に告げたことが無い。なぜならば、それだけは秋葉のものだから。志貴が『愛してる』とささやく相手は、ただ秋葉だ
けなのだ。それだけは、秋葉から奪いたくは無かった。秋葉のために守ってやりたかった。
力の限り平等に愛してやっているつもりだった。でも、そもそもその一点から、二人の扱いには差をつけてしまっている。結局、志貴が将来を約束し、一生涯
を共にすると決めているのは秋葉なのだ。蒼香とそうするつもりはない。でも、その事を蒼香に明確に告げることは出来なかった。蒼香が無意識に求めてくる将
来への誓いに、沈黙を守ること以外には。
志貴は、大きく息をつくと、ベッドに横たわった。そしてその腕に、蒼香を抱き寄せた。蒼香は静かに寝息を立てている。
「ごめんな、こんな不実な恋人でさ」
志貴は、小声で詫びた。いつか、蒼香に別れを告げなければならないと悟り始めている。その時までに、蒼香が成長して、一人の女として自立していることを願った。
志貴も天井を眺めていたが、やがて眠気を感じ、シーツを自分と蒼香とに引き寄せると、明かりを消した。眠りに落ちる前、秋葉は今頃どうしているかな、と思った。
寄宿舎の窓からは、雨に打たれる裏庭が見えている。裏庭の花壇には、初夏の花たちが咲き揃っている。だが、この雨に打たれ、花たちも泣いているように見えた。それは、別種の美を醸しだしている。
「きれいだねー」
秋葉と羽居は、それをぼーっと見ている。仲良い者同士、肩を並べて。羽居は、いつもながら長閑で朗らかな調子で、それを愛でている。お茶と可愛いものがあれば、とりあえず生きていけるようだ。
「――」
秋葉は、黙って裏庭を眺めている。その横顔に、時折焦燥とも悲しみともつかないものが現れるのを、羽居は気づいているのだろうか。
「蒼香ちゃん、今日もお泊りだねー」
机に戻り、お茶を入れなおしながら、羽居はなにげなくいった。
「毎週水曜日はお泊りの日かぁ。蒼香ちゃんも熱心だねえ。よほどお気に入りのライブがあったんだー」
その言葉に、秋葉はその肩で、わずかに反応した。だがなにもいわず、ひたすら花たち眺めている。
羽居は、その頑なな背中をしばらく眺めていたが、やがてポットからお茶を入れながら、何気ない様子でいった。
「秋葉ちゃん。あのね、蒼香ちゃんにとって一番大切なのは、秋葉ちゃんなんだよ」
秋葉の肩が、微かに震えた。
「秋葉ちゃんが、秋葉ちゃんのお兄さんの学校に転校しちゃった時には、蒼香ちゃん、すごく心配したんだから。毎日毎日、秋葉ちゃんのことを心配してね。それを宥めるの、本当に大変だったんだから」
「――――」
「だからね、蒼香ちゃんは秋葉ちゃんのためになること、きっとしてくれるよ。どんなことよりも、秋葉ちゃんを取ってくれるよ。だって、蒼香ちゃんにとって、秋葉ちゃんは、一生涯のお友達なんだもの。蒼香ちゃんは、お友達のためには、どんな事だってしてくれる子だよ?」
だから、心配することなんて無いんだよ、と羽居は笑った。
秋葉は、まだ外に目を投げている。だがその頬を、つーっと、一筋の涙が伝った。
「兄さん、蒼香――」
そう名を呼んだ。苦しみの果てについ漏らした言葉だった。羽居は、そんな秋葉を、アルカイックな微笑を湛え、じっと見守っている。絵画の聖母のように。
何も知らず、苦しんでいる兄。そして、なにもかも知って、苦しんでいる妹。二人の苦しみは、しかし思いもかけず終わる。その素となった娘が、恋人よりも親友を取ったことで。だがそれは、今の彼らには知るよしも無い、未来の出来事だった。
<了>